開発者インタビュー ~製品づくりの裏側~

開発者インタビュー ~製品づくりの裏側~

学びの場のお悩みを解決! お客様と一緒に考えた、みんなのための学習帳

日本ノート株式会社 マーケティング本部 商品企画部 部長 八木 浩史さん/日本ノート株式会社 マーケティング本部 商品企画部 企画開発一課 マネージャー 藤田 忍さん

お話を聞いた方

日本ノート株式会社
マーケティング本部 商品企画部

部長八木 浩史さん

日本ノート株式会社
マーケティング本部 商品企画部 企画開発一課

マネージャー藤田 忍さん

みんな使ってきた学習帳が時代に合わせ進化する秘訣と、変わらない想いとは時代に合わせ進化する秘訣と、変わらない想いとは

日本ノート株式会社は、学習帳ブランドを展開するキョクトウ(KYOKUTO)とアピカ(APICA)が2019年1月に統合して生まれた会社です。2024年1月からはオキナ(OKINA)も統合し、3ブランドが1つになりました。3社とも大正時代から続く老舗企業であり、創業100年を超えた現在もなお、学習帳を筆頭に「書くこと」の重要性を伝え続けています。
教育現場でもデジタル化が進んだいま、どのような想いで製品づくりを行っているのか、お話を伺ってきました。

本国内で初めて「筆記用中性紙」の
ノートを発売

まずは、御社の学習帳の歴史についてお聞きします。当時、国内に学習帳はあったのでしょうか?
八木
いつ頃作られたかは不明ですが、明治時代、日本国内ではもともと無地だったノートに罫を入れて練習帳として売り出したのが、学習帳の原点だと言われています。アピカの創業者である中村寅吉が、ヨーロッパから輸入されていた罫入りノートをヒントに考案しました。
藤田
創業以降、雑記帳や練習帳などノートの製造はしていたようですが、日本ノート内で現在の学習帳に最も近いものの発売は1948年の極東(キョクトウ)の「模範学習帳」です。A5版で、現在主流のB5版より小さなサイズとなっています。
八木 浩史さんの写真
御社には「1000年ペーパー」というキャッチフレーズのノートがありますが、中性紙を使っていて保存に向いているそうですね。当時の学習帳も既に中性紙だったのでしょうか。
藤田
明治時代以降、和紙から「洋紙」の製造がさかんになり、書籍などは酸性紙でした。ところが、酸性紙は空気中の水分や光に反応して紙が黄ばんでしまう事が分かってきました。それを防ぐために生まれたのが中性紙です。
八木
当初、中性紙は書籍を中心に使われていました。そこで日本ノート(当時のアピカ)が王子製紙と共同で「筆記用中性紙」を開発し、1984年に日本で初めて中性紙を使ったノートを発売しました。それが先ほどの1000年ペーパー「アピカパーソナルノート」ですね。紙が劣化しにくくなり、書いた記録をいつまでも保存することが出来る、その保存性の高さが当時は革新的でした。
その後、学習帳にも中性紙が採用されるようになり、今では、国内のほとんどの紙製品が中性紙を使っています。
原紙となる素材の選び方はあるのでしょうか。
八木
日本ノートの環境配慮型商品は、大きく2つのラインナップがあります。ひとつは再生紙を使った学習帳、もうひとつは植林木原紙を使った学習帳です。どちらも環境に配慮した紙といった点から、原材料を選定しています。「筆記用中性紙」を開発したと申し上げましたが、その後「筆記用中性再生紙」の開発にも成功し、今では古紙パルプ配合率100%の再生紙を使った製品を製造・販売しています。
「図かん学習帳」のイメージ写真(表紙)
「図かん学習帳」のイメージ写真(中身)
1967年発売の「図かん学習帳」。上段に数字が印刷されている。

どもにとっても、先生にとっても使いやすい
学習帳を作りたい

中性紙を使ったノートの先駆けだったのですね。同じく先駆けといえば、最初にイラストの学習帳を採用したのも御社だったと聞いています。
八木
カレッジアニマル学習帳ですね。こちらは弊社の推しともいえる製品です。昔からイラストを使った学習帳はありましたが、科目ごとに表紙の色と動物のイラストを変えて、必要なノートを見つけやすくしたという点では先駆けかもしれません。色やイラストに工夫をすることによって、直感的にお子様が分かりやすいデザインにしています。
「カレッジアニマル学習帳」のイメージ写真
写真手前
カラフルなカラーとアニマル柄が可愛い「カレッジアニマル学習帳」。

カレッジアニマル 
こくご リーダー入 18マス(2〜5年)

商品コード
755230
価格
163円(税込)
149円(税抜)
「カレッジアニマル こくご リーダー入 18マス(2〜5年)」のイメージ写真

カレッジアニマル 
さんすう 4マス(1〜2年)

商品コード
724593
価格
163円(税込)
149円(税抜)
「カレッジアニマル さんすう 14マス(1〜2年)」のイメージ写真
ちなみに、動物写真家の岩合光昭氏の写真が表紙の学習帳もありますが、こちらも工夫をされているのでしょうか。
八木
岩合さんといえば「猫」をイメージしますが、学習帳をデザインする上で大事なポイントのひとつに、科目で表紙のデザインが重複してはいけないという事です。例えば、低学年のお子様だと先生が「国語のノートを出して」と言うよりも、「ライオンの表紙を出して」と言う方が伝わりやすい。「猫を出して」と言ってもどの猫種か分からないですよね。だから動物のバリエーションは持たせるようにしています。
例えば街の写真だと、どこの街なのか分かりづらいですが、動物だと認識しやすいんですね。
八木
はい。大人も子どもも共通認識として分かりやすいですし、学校でも先生が指示しやすいと思います。
藤田
他にもカラーユニバーサルデザインを採用しています。例えば、赤と緑が似た色に見えるなど、色が区別しにくいと感じる方もいらっしゃいます。そういった色覚の個人差を問わず、より多くの人が識別しやすい色にしています。さらに表紙にカラー名を表記して、先生が「黄色のノートを出して」と言っても、色名を見て分かるような設計になっています。
学習帳の設計やアイデアは、先生や保護者からヒアリングしているのでしょうか?
藤田
小学校の先生や特別支援コーディネーターなど、子どもたちと関わり合いの深いユーザー様にアンケートのご協力を頂いたり、対面式のグループインタビューを行ったりしています。できるだけ多くのご意見を聞くようにしていますね。
「かんがえる学習帳」のイメージ写真
岩合光昭氏撮影の「かんがえる学習帳」。表紙はカラーユニバーサルデザインを採用。
表紙カラーの色名のイメージ写真
表紙カラーの色名のイメージ写真 ズーム 表紙カラーの色名のイメージ写真
カラーユニバーサルデザインの観点から、表紙カラーの色名を表示。

理的配慮の学習帳は、教育現場での生の声から生まれた

皆が使いやすい学習帳という観点ですと、「スクールラインプラス合理的配慮のためのノート」もあります。
藤田
合理的配慮をコンセプトに、まだしっかり鉛筆を握れないお子様や、小さなマス目に文字を書く事が苦手な、発達が気になるお子様に向けた学習帳です。従来の学習帳よりもマス目を大きく設計して、文字が大きく書けるようになっています。また当社従来品よりマス目の枠線も太くし、記入部分は白く、記入しない部分には薄く色をつけて、どこに「文字を書くか」はっきり分かりやすくしています。
ラインナップはお子様の特性に合わせて、大小のマス目以外にも、様々な罫線のバリエーションをご用意しています。
藤田 忍さんの写真
こちらの表紙はシンプルなデザインなんですね。
藤田
一般の学習帳と見た目があまり変わらないようシンプルなデザインにしており、「合理的配慮」という文言も本製品は表記していません。また、学年や性別を限定しないように、どなたでもお使い頂けるよう配慮しています。表紙に特長を出したり逆にシンプルにしたり。アイテムごとに少しずつコンセプトが違うので、ターゲットに合わせて製品を設計しています。
スクールラインプラス合理的配慮のためのノート

スクールラインプラス合理的配慮のためのノート。
マス目の線が太く、筆記部分が白抜きされている。

書字練習用マス目50mmマス中心リーダー入
書字練習用マス目50mmマス
開発に際し、苦労した点はありますか?
八木
合理的配慮の学習帳を開発した時ですね。お子様や保護者、作業療法士の先生にご意見を伺いました。特に、今までの商品の評価は、マス目が見づらいという意見が多かったです。保護者の方の中には、お子様が見やすいように、既に印刷されているマス目の上を「もう一回なぞって太く濃くしている」という声もありました。そこでやはりマス目を濃くした方がいいんじゃないか、では太さは?色は?など、試行錯誤しましたね。
藤田
マス目の大きさや色、太さなど、設計の照準を誰に合わせればよいのか、ユーザーテストを実施しながら検証を重ねました。それだけに、合理的配慮の製品開発については、ユーザー様の声が圧倒的に必要になってきます。
ユーザーの声を聞かないと分からない部分ですね。
八木
はい。合理的配慮の学習帳は、多くのお客様にご好評を頂いています。それでも、まだ全部のご意見を網羅できていない所もあるので、今後もお声を集めていきたいですね。

合理的配慮のためのノート 
マス目大(書字練習用)

商品コード
148104
価格
189円(税込)
172円(税抜)
「合理的配慮のためのノート マス目大(書字練習用)」のイメージ写真

合理的配慮のためのノート 縦開

商品コード
148111
価格
189円(税込)
172円(税抜)
「合理的配慮のためのノート 縦開」のイメージ写真

ジタル化が進むいまだからこそ、書く事の大切さを伝えたい

近年では教育現場でもICT機器の導入が進んでいます。学習帳を発売するメーカーとして、どのようなお考えをお持ちでしょうか?
八木
PCやタブレット、紙のノートも、それぞれ利点があると思います。ただ、特に幼いうちは、実際に手を動かして、紙に筆圧をかけて書く際の「手」に伝わる感覚を味わって頂きたいですね。鉛筆を走らせる音や、紙をめくる音などもそうですが、小さい頃から五感を刺激する事は、運動するのと同じくらい大切だと思っています。
藤田
学習帳は、鉛筆や消しゴムと同じように学習道具のひとつです。道具を使いこなしていく工夫を、子ども達自身で積み重ねていくことができる。それを体験するためのツールでもあると思います。
様々なタイプの学習帳がありますが、選び方の目安があれば教えてください。
八木
ある程度の学年と科目は商品ラインナップが網羅できていますので、シリーズで揃えて頂く選び方がおすすめです。例えば、お話したカレッジアニマルシリーズや、スクールラインプラスシリーズなどです。また、A4版もございますので、配布されたプリントをそのまま貼りたいなど、用途に合わせてもお選び頂けます。
藤田
学習帳に対するモチベーションが上がるデザインを選ぶ事も選び方のひとつです。たくさんラインナップをご用意していますので、好きな学習帳を選択できる楽しさもあります。
ノートに書くイメージ写真
八木 浩史さんの写真
藤田 忍さんと八木 浩史さんの写真
選ぶのもわくわくする学習帳、それは使いたくなりますね。改めてお二人にとって、学習帳とはどういう存在ですか?
藤田
文具の展示会に出展した際に、学習帳をモチーフにしたシールやステッカーを来場者に配布した事があります。その時に「昔自分が使っていた」「懐かしい」というお声をたくさん頂きました。子どもの時に使っていた学習帳を、ご自身のお子様にも使ってもらう。次の世代に引き継いで共有できるアイコンのような、そういった良さが学習帳にあると思います。
八木
そうですね。学習帳っておそらく息が長い製品だと思います。やはり親子で同じものを使う事があるならば、時代の架け橋的な存在なのかと思います。
ノベルティのシール
展示会で来場者に配布していたノベルティのシール。
最後になりましたが、先生や保護者にメッセージがあればお願いします。
八木
書く事は、脳の活性化や感性を磨くといった利点もありますが、後で見返した時に新しい発見があったり、筆跡を見て当時を思い出したり。たくさんの気づきがあります。デジタルデータでも記録は残りますが、見返した時に、そういう感情に出会う機会はアナログだから体験できるひとつの価値だと思っています。
利便性を求める世の中ですが、書く事は、日々の暮らしを豊かにすると私たちは考えています。いま一度、暮らしのツールとしてノートを取り入れ、子ども達にもその体験を伝えていければ嬉しいです。
藤田 忍さんと八木 浩史さんの写真